brussels report

2013年3月11-18日、平林克己は、EU本部のあるベルギーのブリュッセルで、外務省の出先機関であるEU日本政府代表部との共催で、写真展を行いました。
2012年3月から東京、神戸、岡山と続いた写真展ですが、今回、初の海外開催となりました。いままでの写真展のテーマが「震災の風化防止」であったのに対し、今回は日本政府代表部の企画するJapanese Weekに連動し、強く、美しい、日本の魅力、そして底力をヨーロッパに伝えることを目的し、タイトルも国内での「陽」から、Dawn in Japan(日本の夜明け)としました。
以下に、そのご報告をします。

JWB0217_A5_Bozar.jpg
Japanese Week ポスター designed by Yasuhiro Mega


東日本大震災から2年。東北はまだまだ復興の途上にあります。ブリュッセルにある日本政府代表部の企画するJapanese Weekは、日本に関する数々の文化イベントやセミナーを通じて、ヨーロッパの方たちに日本の魅力を伝え、また日本に対して示してくれた絆への感謝の気持ちを伝えること、そして被災してしまった方々にも勇気をもってもらいたい、という目的をもって企画されました。Dawn in Japanの写真は、この趣旨に大きく合致することから、日本を伝えるイベントのひとつを担うことになりました。
ブリュッセルに到着し、今回お世話になる欧州連合日本政府代表部に表敬訪問をします。
日本からは、写真集を発売してくれた株式会社河出書房の河出社長、福島を代表して相馬の高橋さんが同行してくれました。

DSC06687.jpg

塩尻大使、丸山大使に、今回お世話になることをご挨拶しました。
僕が見て感じて来た東北の状況の報告に、じっと耳を傾けてくれた塩尻大使は、一通り聞き終わると、「“僕たちがやらないで誰がやるって人が沢山いるよ。だから頑張りましょう。」、「負けたり、あきらめたりなんてしないはずだ、福島も絶対立ち上がると僕は信じている」と言ってくれました。
続いて、丸山大使とのミーティングが始まりました。同じ意識を共有するための最終確認です。丸山大使は、Japanese Weekでこの写真展が最大限の力を発揮できるよう、この数ヶ月間、尽力してくれた方です。丸山大使の言葉の端々からは、大使が本気で日本のことを考えているのがはっきりわかりました。
大きな勇気をいただきました。いよいよスタートです。これから1週間、どうかよろしく御願いいたします。



写真展Dawn in Japanの初日は、市内にあるビブリオテックソルベイにて。
シンクタンクのフレンズ・オブ・ヨーロッパとJICAによるシンポジウム「津波後の日本:復興への取り組み」に付設する形で開催されました。(→こちら
大島・元国連大使、ゲオルギエヴァ欧州委員、JICAや外務省、各国大使館の方々等、このシンポジウムに参加していた方の多くが写真展にいらっしゃいました。

DSC06834.jpg
案内板も英語になっています

DSC06828.jpg
今回から写真はアルミパネルになりました

DSC06844.jpg
写真は言葉に依存しません

DSC06852.jpg

ゲオルギエヴァ欧州委員は、ブルガリア出身の、EUの災害担当大臣です。ブルガリアの次期首相候補として名前も挙がっています。東日本大震災の直後、外国の大臣としては一番はじめに、大量の支援物資とともに来日し、EUとして、日本の要望に応じ、いかなる支援も行うことを宣言し、義捐金1千万ユーロを日本赤十字社に寄付しました。
幸運なことに、ゲオルギエヴァ委員と話す機会があり、感謝の言葉を伝えることができました。
「最近の状況はどう?」
「まだまだ大変なことがたくさんあります。でも、おかげさまでがんばっています。」
という大切な話から、ブルガリアでヨーグルトを食べたかどうか、という超世間話まで、本当に気さくに接してくれました。

DSC06886.jpg
ゲオルギエヴァ欧州委員と

DSC06878.jpg
日本のことを本気で心配してくれています

福島の高橋さんも、ゲオルギエヴァ委員から激励の言葉をもらっていました。
「フクシマガンバッテ!」
(後ほど、高橋さんは、「あの方が支援関係の大臣でほんとによかった」と何度も言っていました)

8551670150_a43f1f408d_b.jpg
感謝の言葉に、ゲオルギエヴァ委員も大変うれしそうでした




その他にも、多くの方と話すことができました。
今の日本の状況を真剣に聞いてくれる方、福島の放射線のことを本気で心配しているNATO関係の方。そして、そのほとんどが「日本がんばってますね。一緒に歩いていきましょう」と声をかけてくれました。

写真展の後には、BOZARにおいて、ウィーンフィルによる日本のためのコンサートが開かれました。(→こちら
指揮者のズービン・メータ氏は、2011年3月11日、日本で震災に遭い、強制的な帰国命令が下る中、報道機関の取材に対し、「日本の友人たちのために何も演奏できず、去るのは悲しい」と涙し、「音楽の力で人々を励ます場面が絶対に訪れると信じている」と言って帰国したものの、その1ヵ月後の4月10日、多くの公演がキャンセルとなる中、東京に戻り、公演の収益が全額寄付されるチャリティー・コンサートを行ったそうです。

今日のウィーンフィルの演奏は、メータ氏の指揮のもと、一切手抜きのない、息を呑むような気迫を感じるものでした。

IMG_0017.JPG
3.11ウィーンフィルコンサートパンフレット
平林撮影、妻鹿デザインのJapanese weekの広告が載っています。
- 岩手県山田町の海 -



ヨーロッパでも、多くの人が日本に高い興味をもってくれていることを肌で感じる初日となりました。





写真展2箇所目は、欧州連合経済社会評議会EESCのビルで行われました。
この日は、Japanese Weekに関連して、神戸大学による、東日本大震災から2年を記念したシンポジウム(→こちら)が開催され、僕はそこにパネラーとしても参加させていただきました。
写真展にいらっしゃったのは、各国の大学関係の識者の方々、EU政府関連の方々です。ここでも写真に強い関心をもっていただき、日本に関していろいろな話をすることができました。また、高橋さん、河出さんも、言葉の壁を乗り越え、来てくださった方たちと一生懸命話をしていました。
しかし、ヨーロッパでは日本に関する情報がいろいろな解釈をされているらしく、みんなで雑談をしているときに、EESCの職員の方が「日本に行ってみたいけれど、フクシマが怖くてね」と言ったことに対して、以前日本に住んだことのあるベルギー政府の方が「大丈夫!ほんとに大丈夫だから、ぜひ行って下さい」と、周囲のみんなに呼びかけるという一幕もありました。

_MG_3549.jpg
EESCの6F

DSC07210.jpg
国際的な場であることを実感するところです

DSC06970.jpg
EESCのみなさんも見にきてくれました

DSC07310.jpg
言葉がわかろうがわかるまいが関係なく話しかけられます

そして、神戸大学のシンポジウムには、午後の部から参加させていただきました。
パネラーはEU研究で有名な神戸大学大学院経済学研究科の久保 広正教授をはじめとする教授の方々で、そこに一人だけカメラマンが紛れ込むという異常な事態となりました。
ここでは、震災に関連した様々な問題が、学問的なハイレベルな見地から話し合われました。その中で、30分ほどのプレゼンの時間もいただき、同じレベルでの話ができないことは明らかなので、気後れすること甚だしかったのですが、瓦礫撤去に始まり、石巻の避難所での家族写真の撮影、復興のプロセスの撮影と、この2年間に自分がかかわった現地での様子を、写真をもって説明するとともに、Dawn in Japanのムービー(→こちら)をかけ、「東北の人たちはこんなにがんばっています」ということをできる限りの方法で伝えさせていただきました。

DSC07233.jpg
何語で話そうが、日、英、仏、蘭語に同時通訳されます

DSC07255.jpg
テレビでみたような光景

DSC07269.jpg
29番は仲間はずれなのではありません。ここが発言席なのです

DSC07243.jpg
実は一人だけノーネクタイで来てしまったことを後悔しています

後半は、パネルディスカッションです。明らかに目線が違う(低い)ところからの発言ばかりしましたが、こういったシンポジウムで違う視点からのコメントをすることには、大きな意義があったのではないか、と思います。
最後に一言発言をさせていただくことができたので、「先生方の研究は大変すばらしいと思います。しかし、そうしたものが実際に現場で実行に移されるにはどうしたらいいか、その方法も研究いただけたらさらにすばらしいと思います。どうかよろしく御願いします」と、明らかに空気を無視してはいますが(ごめんなさい)、ぜひ言いたかったことを言わせていただきました。
シンポジウムは、ベルギー政府の方の「ニホン、EU、イッショニガンバリマショウ!」の一言で締めくくられました。

この場での僕の発言、プレゼンは、ありがたいことに一部の方たちから一定の評価をいただき、今後のヨーロッパ各地での活動につながる提案をいくつかいただくことができました。

_MG_3457.jpg
EESCの文化担当シルビア氏と
写真集にたくさんの付箋がはさんでありました
大変光栄です


写真展3箇所目は、シュタインベルガーグランドホテル(旧コンラッドホテル)で開催されたブリュッセルフォーラム内で開催されました。
ブリュッセル・フォーラムは、ミニダボス会議とも言われ、北米・ヨーロッパ諸国の政府高官、主要機関の代表者、学者や各分野の専門家たちが集い、世界の経済、安全保障、環境等の幅広いテーマについて議論を交わす、民間最高レベルのフォーラムです。
欧州各国の首脳や閣僚級を含む指導者、さらには、米国から連邦議会議員が多数出席することが特徴で、先日お会いしたゲオルギエヴァ委員をはじめ、ノーベル平和賞を受け取ったファンロンパイEU大統領、世界銀行総裁、日本からも、外務省の事務次官に次ぐ二番目の立場である鶴岡外務審議官がいらっしゃっいました。
#セキュリティが厳しく、この日は、自分と、日本政府代表部の高元氏しか会場に入れなかった関係で、写真があまりありません。

_MG_3568.jpg
これが今回のブリュッセルでの看板

_MG_3576.jpg
当初10枚程度と制限されていた展示が、
急遽全数フル展示に変更されました

_MG_3615.jpg
どこに行っても写真を見る人の目線は同じ

_MG_3633.jpg
南三陸の防災庁舎の話に涙しています

ブリュッセルフォーラムでは、目を引く写真をもって興味を引き、そこから話をして、東北や日本のことに興味をもっていただくという、自分なりのやり方が発揮できた感があります。
ここでも、日本への関心は高く、たくさんの方が、日本の現状をいろいろ聞いてきてくれました。
ここでお会いした方々は皆、国レベルのことで大きな動きをつくることができる方たちばかりです。なんらかの形で、この写真展で感じたことがそこに反映されることを願います。

DSC08403.jpg
主催者ジャーマンマーシャルファンドの会長

DSC08428.jpg
この写真はワシントンDCに行きました

_MG_3588.jpg
どれだけ偉いかわからず話しています

DSC07963.jpg
Japanese Weekで平林克己写真展が最大限の貢献ができるよう、
この8ヶ月間、奔走してくれた日本政府代表部高元書記官と



写真展最終日は、王立音楽院(Royal Conservatory)です。
日本人として初めてエリザベート王妃国際コンクールで優勝したヴァイオリニストの堀米ゆず子さんと、ショパンコンクールで入賞したこともある、ピアニストのジャン・マルク・ルイサダさんのコンサートと共催となっています。
先の3回の写真展が限られた人たちしか入れなかったものであったのに対し、今回は誰でも入れます。

_MG_3720.jpg
荘厳かつ重厚すぎる会場

DSC08810.jpg
ブリュッセル側でずっとサポートしてくれたSaoriさん

この会場では、30分ほどプレゼンの時間が用意されました。今のがんばっている日本の姿を伝え、「こんな魅力的な国なら、もっと深い絆を作りたい」とヨーロッパの人たちに思ってもらえるようにする、という、Japanse Weekのコンセプトを最後まで貫き通します。
スピーチが英語だったため、当初は厳密に練られた原稿があったのですが、直前になって高元書記官からから、「原稿は無視して、アドリブでいいから、自分の言葉で話せ」という大変厳しい命令が下り、苦心したものの、途中で間の取り方がわからなくなってしまったのが悔しいところです。
ここでも、13日のEESCでのものと同じビデオ(→こちら)をながしました。この中にはDawn in Japanの写真がほとんどすべて入っていて、スピーチの最後は、「ヨーロッパであれ日本であれ、希望という言葉は同じです。みなさんが苦境に陥ったとき、これらの写真が、その困難を克服するために役立つことを願います。」と結びました。

_MG_3771.jpg
大きなスクリーンが用意されました

DSC08730.jpg
プレゼンは英語
この最前列のご夫妻は仏・独語を話す方たち
それでも、じっと聞いてくれました。

同行してくれた福島の高橋さんも、大勢のヨーロッパの方たちを前に、福島県相馬市のことを伝えます。その現状に驚く顔があり、そして激励の言葉が飛びました。

DSC08742.jpg
あたたかさをいただきました

DSC08755.jpg
福島を代表して話します

この会場でも、たくさんの方たちと話をすることができましたが、そこで交わされる会話は、自分が日本での写真展で交わした会話と、言語こそ違えど、大きく変わりのあるものではありませんでした。
現状に心を痛め、がんばる日本の姿に共感し、暖かい言葉をたくさんいただきました。

DSC08826.jpg
福島の海の写真をながいこと見てくれていました

DSC08824.jpg
このパンフレットの裏に大きく赤く書かれた「陽」
評判でした

DSC08796.jpg

DSC08818.jpg

DSC08840.jpg
この日、特に熱かったご夫婦
熱心に耳を傾け、何度も何度も「ありがとう」と言ってくれましたが、
ありがとうといいたいのはこちらの方です。




ブリュッセルでの1週間は、あっという間に過ぎてしまいました。
その間、日本が、東北が、如何に大変な状況であるか、ということはほとんど伏せ、ひたすら日本の底力を示せるよう苦心してきました。そして、たくさんの方が真剣に写真をみて、真剣に僕たちの話に耳を傾けてくれました。そして、そこからは、日本に対する大きな関心と、一緒にがんばろう、という強い絆を感じました。それは、ブリュッセルに行く前に期待していた反応よりも、はるかに大きなものでした。
ありがたいことに、日本政府代表部の丸山大使からは「堀米さんのバッハと平林さんの写真の「協演」は日本が伝えたかったメッセージをもっとも深い形で人の心に届けたのでは」との言葉をいただきました。こんなにうれしい言葉はありません。しかし、僕はJapanese weekを企画・運営したEU日本政府代表部のみなさんの妥協のない本気さに心を打たれました。そして、Japanese Weekの各イベントを担当したみなさんが居て、僕がただその中の写真部門を担当し、福島の高橋さんが東北のことを伝え、そして、一人ひとりの名前を挙げたらスペースが足りないほどの、僕や僕たちを現地で支えてくれたみなさん、そして日本から見守ってくれていたみなさん、すべての日本を思う気持ちがひとつになった結果だと思います。
こうしたみなさんのすべてにこの場を借りて、ありがとう、と言いたいと思います。

写真展終了から1週間後の3月25日、ブリュッセルフォーラムにもいらっしゃったファンロンパイEU大統領と安部総理はEPA(経済連携協定)交渉を開始することで合意し、日本とEUの絆が大きく深まる第一歩が踏まれました。もし、日本がこれから大きく沈んでいく国であったならば、もし、可能性も魅力もない国であったならば、EUは日本など相手にしなかったでしょう。Japanese Week、そして東北を通じて日本の底力を伝えようとした写真が、そこに大きく寄与したと信じたいと思います。

そして、1万キロも離れたヨーロッパでも、東北のことを想ってくれている人たちがたくさんいます。

みんな日本・東北の復興を待っています。


2013年3月 平林克己